第2問★ 二重起訴禁止
自己回答
第1 ⑴について。
1 142条は、「裁判所に係属する事件については、当事者は、さらに訴えを提起することができない。」と定めている(重複する訴えの提起の禁止)。
このXの訴えにおいて、Xは「上記売掛金債権の支払い」を求めている。しかしこの売掛金債権は、YのXに対する訴訟において、自働債権として相殺する旨の抗弁として提出したものである。
(※抗弁 民事訴訟における防御方法の一種で、被告が原告の申し立て又は主張を単に否認するのではなく、その申し立て又は主張を排斥するために、別個の事項を主張すること。抗弁については被告が証明責任を負う。)
よって、この自働債権は、「裁判所に係属する事件」においてすでに扱っている事件なので、Xの訴えは142条に該当する。
したがって、当該Xの訴えは許されない。
自己回答
第2 ⑵について。
1 甲の乙に対する訴訟(訴訟1と呼ぶ)において、甲は、債権1000万円のうちの500万円について、一部であることを明示して支払い請求をしている。
これによって、債権のうち500万円は分離して請求していると考えることができる。また、残部の500万円の債権については、請求していないと解することができる。
2 別訴(訴訟2と呼ぶ)において、乙は、甲に対して有する500万円の貸金返還請求をしたところ、甲は、前記売掛金債権の残部をもって相殺する旨の抗弁を提出した。
この甲が有する売掛金残部の500万円については、訴訟1において「一部であることを明示」しており、残部の500万円とは分離した別のものと考えることができる。
よって、甲が有する売掛金債権残部500万円は、訴訟1において裁判所で継続する事件ということはできず、142条に該当しない。
それゆえ、甲の相殺の抗弁の主張は許される。
甲☺
対乙・売掛金債権1000万円
うち500万円(一部・明示) 支払い請求訴え 乙☺
対甲・500万円貸金債権
残部・500万円・相殺・抗弁 貸金返還請求・別訴
※自働債権 相殺において、相殺をしようとする側の債権者の債権。相殺をしようとする債権者が相手方に対して負っている債務、すなわち相殺される債権(受働債権)に対する語。
※抗弁 民事訴訟における防御方法の一種で、被告が原告の申し立て又は主張を単に否認するのではなく、その申立てまたは主張を排斥するために、別個の時効を主張すること。抗弁については被告が証明責任を負う。
※二重起訴 訴訟係属中の事件(※出来事)についてさらに訴えを提起すること(民訴142、)。
※民訴142 (重複する訴えの提起の禁止) 裁判所に係属する事件については、当時者は、さらに訴えを提起することができない。
※係属 1⃣一般には、ある関係によってつながること。2⃣訴訟法上の用語で、民事、行政又は刑事の訴訟事件が裁判所にかかっており、裁判所において審理中の状態にあることをいう。訴訟係属ともいう。なお、訴訟人権に準ずる事件、例えば、裁判官弾劾事件や特許の侵犯事件等が審判の対象となっている状態にある場合にも用いられることがある。
訴訟1
貸金債権・500万円
Y☺ 貸金返還請求訴訟 X☺
相殺(抗弁) 売掛金債権500万円💰・自働債権
その後、訴訟2←142に該当。禁止。 訴訟1の裁判所に係属する事件で使用されているお金
Y☺ 上記売掛金債権の支払い請求(別訴) X☺
売掛金債権500万円💰