司法試験受験日誌

司法試験合格過程

伊藤塾・試験対策問題集・予備試験論文5・刑法 第2問・因果関係・答案

答案

第1 

1 暴行とは、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときをいうところ、甲は、Xの腹部を足蹴りにするなどした。よって少なくとも、甲に暴行罪(208条)が成立する。

2 逮捕及び監禁とは、不法に人を逮捕し、又は監禁した者であるところ、甲は、Xを自動車のトランクに押し込み、脱出できなくしている。また、逮捕した状態で、自動車で走行し、監禁した。よって、甲は逮捕及び監禁罪(220条)に該当する。

 3 逮捕・監禁致死傷罪(221条)とは、逮捕・監禁罪(220条)を犯し、よって人を死傷させたことをいうところ、甲の行為は、逮捕・監禁致死傷罪に当たるか。

 4 上記2より、甲の行為は、逮捕・監禁罪にあたる。

 5 また、相当因果関係説によると、当該行為から当該結果が生じることが社会通念上相当といえる場合にのみ、刑法上の因果関係が認められる。

   本問行為とは、自動車のトランクに人を監禁する行為であるが、自動車のトランクは、人が乗るようには設計されておらず、追突事故などの際には、安全が確保できない危険な部分であると考えられるところ、そのような危険な部分に人を監禁し、交通のある路上で車を停止させる行為から、追突事故によりX死亡する結果が生じることは社会通念上相当といえる。

   よって、甲の行為とX死亡との間に刑法上の因果関係が認められる。

 6 また相当性の有無については、行為の危険性が結果として現実化したといえるか否かで判断する見解が有力である。甲の行為は、行為の危険性が結果として現実化したということができ、相当性があるといえる。

 7 以上より、甲には、逮捕監禁致死罪(221条)が成立する。

 8 法条競合とは、条文法、数個の構成要件を充足するようにも見えるが、構成要件相互の関係で、結局1個の構成要件にしか充足しないと評価される場合をいうところ、逮捕監禁罪(220条)と逮捕監禁致死罪(221条)は法条関係にあり、甲は後者の罪責を負う。

以上

 

ご批評を乞いたい。