司法試験受験日誌

司法試験合格過程

論点について

論文試験において、重要なのは、論点について論ずることである。

それゆえ、論点を整理することが重要である。

例えば、刑法における、間接正犯、共犯、未遂、正当防衛などの犯罪の成否。

規範を定立し、事例を拾い、当てはめを行い、結論を出す。

問題の論点について時間内に論述する必要がある。

司法試験合格のためには、過去問分析が重要であり、出題趣旨の分析が必要であり、採点実感の分析が必要である。また、過去問については、正解できる必要がある。

過去問で正解できればいいのであれば、過去問に当たるのが近道であるように思えるが、基本を理解していないと、論点がわからず、正解が理解できないし、正解を出せない。

それゆえ、我慢して、基本を学ばざるを得ない。

刑法について

罪刑法定主義。犯罪と刑罰を定める。

民法とは一線を画する。民法においては、国家権力が、人について紛争の調整をする。

他方、刑法においては、国家権力が、人について犯罪を認め、刑罰を科する。

民法においては、話し合いによる調整が主になるのに対し、刑法においては、事実立証が重要になる。

民法と刑法とでは、性質が異なる。

伊藤塾・試験対策問題集・予備試験論文5・刑法 第3問 過失犯

答練

第1 甲の罪責を論じる。

 甲は、過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下法名略)5条)にあたるか。

 1 過失運転致死傷罪(5条)は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者」を処罰する規定である。

 甲は、走行中、老人丙が道路わきを通行しているのを確認したが、道路に出てくることはあるまいと判断し、そのまま走行したところ、丙が足をふらつかせて道路に出てきた。甲は、安全に停止することも、安全に丙をよけることもできず、丙をひき、よって、丙に骨折等の重傷を負わせた。

 甲の行為によって、丙のけがが生じており、因果関係が存する。

 道路わきを通行する人が、道路に出てくることはあるまいと、甲が判断し、速度を落としたり徐行したり、又停止したりするなどしなかったことは、運転上必要な注意を怠ったといえる。

 よって、甲は、丙のけがについて、過失運転致傷(5条)の罪責を負う。

第2 甲は、乙死亡について、罪責を負うか。

 乙は、こっそりと荷台に潜んでいた。

 社会通念上、人がこっそりと荷台に潜むことは、考えられず、甲が、乙がこっそりと荷台に潜んでいることに気づかない事は、運転上必要な注意を怠ったとは考えられない。

 よって、甲は、乙死亡について、罪責を負わない。

以上

伊藤塾・試験対策問題集・予備試験論文5・刑法 第2問・因果関係・答案

答案

第1 

1 暴行とは、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときをいうところ、甲は、Xの腹部を足蹴りにするなどした。よって少なくとも、甲に暴行罪(208条)が成立する。

2 逮捕及び監禁とは、不法に人を逮捕し、又は監禁した者であるところ、甲は、Xを自動車のトランクに押し込み、脱出できなくしている。また、逮捕した状態で、自動車で走行し、監禁した。よって、甲は逮捕及び監禁罪(220条)に該当する。

 3 逮捕・監禁致死傷罪(221条)とは、逮捕・監禁罪(220条)を犯し、よって人を死傷させたことをいうところ、甲の行為は、逮捕・監禁致死傷罪に当たるか。

 4 上記2より、甲の行為は、逮捕・監禁罪にあたる。

 5 また、相当因果関係説によると、当該行為から当該結果が生じることが社会通念上相当といえる場合にのみ、刑法上の因果関係が認められる。

   本問行為とは、自動車のトランクに人を監禁する行為であるが、自動車のトランクは、人が乗るようには設計されておらず、追突事故などの際には、安全が確保できない危険な部分であると考えられるところ、そのような危険な部分に人を監禁し、交通のある路上で車を停止させる行為から、追突事故によりX死亡する結果が生じることは社会通念上相当といえる。

   よって、甲の行為とX死亡との間に刑法上の因果関係が認められる。

 6 また相当性の有無については、行為の危険性が結果として現実化したといえるか否かで判断する見解が有力である。甲の行為は、行為の危険性が結果として現実化したということができ、相当性があるといえる。

 7 以上より、甲には、逮捕監禁致死罪(221条)が成立する。

 8 法条競合とは、条文法、数個の構成要件を充足するようにも見えるが、構成要件相互の関係で、結局1個の構成要件にしか充足しないと評価される場合をいうところ、逮捕監禁罪(220条)と逮捕監禁致死罪(221条)は法条関係にあり、甲は後者の罪責を負う。

以上

 

ご批評を乞いたい。

伊藤塾・試験対策問題集・予備試験論文5・刑法 第1問★ 不真正不作為犯・答案練習

伊藤塾・試験対策問題集・予備試験論文5・刑法

第1問★ 不真正不作為犯・答案練習

第1 甲の罪責について論じる。

 1 甲の行為とA死亡の間に因果関係があるか。客観的構成要件が成立するか。また、過失運転致死罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文)が成立するか。保護責任者遺棄等(218条)、遺棄致死傷(219条)は成立するか。道路交通法72条(交通事故の場合の措置)違反は成立するか。

 2 具体的事実について。甲は、自動車運転を誤ってAをはね、Aに重傷を負わせた。又、甲は、自動車を降りてAの様子を見たが、死ぬことはないと思い、Aをその場に放置し立ち去った。Aは、病院へ運ばれれば、十中八九救命可能だったが、病院へ運ばれず、数時間後死亡した。以上が外見的に認識できる事実である。

 3 客観的構成要件について。深夜、重傷者Aを事故現場の道路付近に放置する甲の行為と、数時間後の重症者A死亡の結果との間には、因果関係があると社会通念上、評価できる。それは、暗く交通が減りけが人の発見が困難になりうる深夜に重傷者を事故現場の道路付近に放置する行為によって、自動車事故の重傷者Aが、発見されることがなく安全を確保されることなく、又治療を受けることなく、よって、けがが悪化し、数時間後に死亡する結果は、社会通念上、起こりうるからである。したがって、当該案件は、客観的構成要件をみたす。

 4 特殊事情の介在について。甲の行為後に、たまたま現場を自動車で乙が通りかかり、Aを暗く交通量の少ない道路上に放置するという特殊事情が介在する。しかし、Aの死亡は、甲が自動車でひき、重傷を負わせ、深夜の道路に放置したことによって、社会通念上十分起こりうることである。この特殊事情がなかったとしても、甲の行為とAの死亡の結果の間には、因果関係が存しうると、社会通念上、評価できる。

 5 以上より、過失運転致死罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文)が成立する。

 6 道路交通法72条違反について。道路交通法72条は、「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定している。本案件で、交通事故が発生したことや、負傷者が発生したことは明らかである。

これに対して、甲は、その場に負傷者Aを放置して、自動車で逃走した。甲は、交通事故があった時、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じていなかった。

 また、甲は、負傷者の救護義務を負うところ(道路交通法72条)、要救護者を安全な場所に移動することなく、救急車を呼ぶことなく、また、病院へ運び治療を受けさせることなく、救護をすることなく、又危険防止の措置をすることなく、深夜の暗く危険な事故現場にそのまま遺棄し、その生存に必要な保護をしなかった。

 以上より、甲の行為は、道路交通法72条に違反する。

7 構成要件故意について。甲は、Aの様子を見て、死ぬことはないと思い、Aをその場に放置した。よって、甲は、当該実行行為によって、Aの死亡の結果を認識認容していなかった。したがって、当該事案において、甲は、A死亡結果についての構成要件的故意を有さなかったと評価できる。

8 以上から、甲の行為は、客観的構成要件はみたすが、主観的構成要件はみたさない。よって、甲は、Aの死亡結果を認識認容しなかった。このため、甲の行為は、遺棄等致死にあたらない。

9 甲は、Aが死ぬことはないと判断した。これは、社会通念上、不注意によって、犯罪事実の認識・表象を欠くといえる。なぜなら、甲が、Aに体調を聞いたり、注意してAの様子をみたりすれば、重傷を負ったAのけがの具合を容易に理解できたと考えられるからである。よって、甲について、注意義務に違反した程度が著しいといえ、重大な過失を肯定できる。

10 保護責任者遺棄(218条)について。甲が、Aの保護責任者にあたるかどうかが問題になる。道路交通法上の救護義務により、直ちに保護責任が肯定されるわけではない。単純なひき逃げの場合は、保護責任は否定されるとするのが一般的である。もっとも、排他的な支配を獲得した場合には、保護責任者遺棄罪が成立しうる。 

判例最判昭和37・7・24)は、ひき逃げをした運転手が、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れて、降雪中の薄暗い車道まで運び、医者を呼んでくると欺いて、被害者を自動車から降ろし、放置して、自動車で走り去った事案において、運転手に保護責任者遺棄罪の成立を認めた。

当事案においては、甲は、Aについて、排他的な支配を獲得したといえない。よって、甲の行為には、保護責任者遺棄罪が成立しないと考えられる。

11 遺棄等致死傷(219条)について。本事案の甲には、保護責任者遺棄罪が成立しないため、甲に遺棄等致死傷(219条)は、成立しない。

司法試験短期合格者の記事を読んで思ったこと

司法試験短期合格者のブログを読んでみた。

自分とは違う。

自分は、去年の9月から、ぼちぼち法規を学び始めた。この時は、特に司法試験は考えていなかった。

そうだ。司法試験勉強ではなく、単に法規を知りたかったんだ。それで法規関係の動画を見たり、法規関係の本を読んだりし始めた。この時『令和4年ポケット六法』を買った。

病気で体調が悪く、精神状態が悪く、寝込むことが多かった。病気の回復を考えていた。司法試験は考えていなかった。

前回の診察時(5月2日かな)に、先生に普段何をしているか聞かれて、法規範を調べているという話をして、法曹実務に就くという体で法規を学んでいるという話をした。将来の仕事のことを聞かれたので、弁護士ということになると思いますと答えた。

そして、先生や他者にこのように明確に答えてしまうと、それなりにやらなければいけないかな、と自分で思い始め、自分を追いつめ始めている。この点は、心の健康に悪影響があると思う。聞かれたから答えただけだけど、これによって自分に圧力をかけてしまっている。これはどうかな、精神的には、よくないかな。

今の自分は、まだ、うつとかで精神的に病んでおり、精神疾患の改善回復を優先すべきであると思う。気力があるときは試験対策すればいいけど、気力がなくなり気分が悪化したら、休んで寝るのが正しいと思う。

自分自身は、こうした状況で試験対策的なことをしているのだが、司法試験短期合格者とは違っているということ。

短期合格者は、塾など、躊躇なく利用している。そこで迷っていない。私の場合、まず塾の講義に堪えられないと思うので、塾は利用していない。自分にプレッシャーをかけたくないということを考えている。

そんなわけで、短期合格者と自分とは、違うということが分かった。